ジュエリーワンダーラスト

エシカルジュエリーブランドの立ち上げ準備の記録と海外暮らしについて。

腱鞘炎と彼女のエステ

ブランドを立ち上げるにあたって、かなりグーグル先生にお世話になっている。まあ何も立ち上げなかったとしても、毎日確実にお世話にはなっていた。

 

最近になってようやく、業者や工房の候補先に連絡を取って、その「中の人」から情報や見積もりをいただいたり、ようやっとグーグル先生以外のかかわりが出てきた。ちなみにその「中の人」の連絡先だって、グーグル先生が教えてくれたものだ。

 

ネット上で探して見つからない情報というのはもちろんあるが、2021年現在、たいていのことはネット検索で解決できる

 

ただし、単語を入れてさっと情報が出てきたわけではもちろんない。欲しい情報を手に入れるためには、適切な検索ワードを選び、組み合わせて検索する必要がある。そして時には、出てきた膨大な数の検索結果を一つ一つ確認するという、およそスマートとはかけ離れた作業が発生することもある。

 

私の工房探しがまさにそうだった。適切な工房を探すために、単語を入れ、検索結果で出てきたサイトをそれこそしらみつぶしに一つ一つ確認していった。そうしてショートリスト化して、実際に連絡をする工房を絞っていった。このローラー作戦で70社以上のサイトを開いては閉じ、開いては閉じ、を繰り返した。1日で集中して行ったので、最後には腱鞘炎になるかと思った。

 

ブランド立ち上げの初期段階はとにかく「リサーチ」あるのみである。手段は、本を読んだり、人に聞いたり、ググったり、色々な選択肢がある。

 

そんな中で、ふと思い出したことがある。私の友達で、とても美容が好きで詳しい子がいる。ある日仲のいい複数人で会っているとき、その子が最近通っているエステの話をして、そこがとても良いということを言っていた。私は普通に話の相槌のつもりで、「へーそうなんだ!なんていうとこ?」と尋ねた。しかし彼女は一瞬表情を硬くした後、私の言葉が聞こえなかったように、次の話題に移った。

 

表情を見てすぐに分かった。これは「聞こえなかった」のではなく、「聞こえないふりをした」のだ、と。

 

私も単に話の相槌と思って尋ねただけだったので、そのことには特に固執することなくその場は終わった。そしてその後、彼女が美容家として食べていこうとしていることを知った。この時ようやく、あの時の彼女の反応に合点がいった。あの時のエステの話は彼女の趣味の話というよりは、彼女が時間とお金をかけてようやく見つけた、ビジネスに関連する価値ある情報だったのだ。

 

今回トライ&エラーを繰り返しながら取引先を探す中で、確かにこうして時間と労力を投入してやっと得た情報(しかも精査済み)を、人の軽い「教えて」の一言で明け渡すことについてなんだか嫌な気持ちになる、ということが想像できた。

 

ただし一般のビジネスでは、自社の情報を隠すことで、ライバル会社と差異化を図ったって市場で優位に立つのだろうが、私のビジネスの場合は、第一の目的は途上国の資源を適正な価格で買い、それによって現地の人々の収入を向上させることにあるので、むしろ積極的に情報は公開していったほうがいいのではないかとも思う。私以外の人もその業者から買えば、それだけ現地の人に行くお金が増えるのだから。その一方、もちろん在庫にも限りがあるので、その業者が人気になりすぎると、私の発注分が供給されずらくなったりするのだろうか…?まあ今の段階で考えることでもないので、もっと大量に調達するようになってから考えればいいと思う。

 

とにかく、なんでもネットで検索できる今は、人に軽い気持ちで「教えて」ということも難しくなってしまったのかと思うと、少し悲しいし窮屈でもある。その一方、情報はお金、というのはその通りなので、その辺の感覚の境界を行ったり来たりしながらこれからも情報を取っていくのだと思う。

 

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サムネのために何かしら画像をつけないといけないので、最近まで住んでいた国の野良犬を。モデルばりのポージング力。