ジュエリーワンダーラスト

エシカルジュエリーブランドの立ち上げ準備の記録と海外暮らしについて。

「本への書き込み」と和解しようか

本を読むとき線は引く派か?私は引かない。

 

教科書でも書き込みを躊躇していたくらい、私は本を汚したくない派だ。

 

なぜならそれは、私にとって「本=文学」だから。触れてきた本の大半が小説や物語であり、実用書や参考書にはなじみが薄い。だから本にマーカーで線を引いたり、文字を書き込んだりというのは、学校でならまだしも、自分で買った本に行うことはない。

 

話は少し逸れて、電子書籍がでたとき、これは便利だと思った。

 

まだ電子書籍を使っていなかった2010年代前半、私はフランスに留学していた。持っていける荷物には限りがあり、中でも紙の本は真っ先に切り捨てざるを得なかった。しかし、留学期間の途中でどうしても、日本語の本が読みたくなった。パリには紀伊国屋がある。なんならブックオフもある。問題は、私が住んでいたのはパリではない、ということだった。

 

そんなとき好機が訪れる。姉が日本から遊びに来ることになったのだ。ここぞとばかりに私は、「分厚く中々読み終わらない」という基準で本をいくつか頼んだ。そのうちの一冊が、「ブロック本」として有名な京極夏彦先生の『魍魎の匣』である。

姉は荷物から本を取り出しながら、表紙を一瞥して一言、「気持ち悪い」と呟いた。(当時の表紙は上のものとは若干違った。もっと気持ち悪かった。)

 

もし私の留学時代に電子書籍が一般的だったなら、姉にそんな思いをさせることもなく、私は自分で思う存分本を持って行けただろう。そんな思い出もあり、私は現在本を買うのはもっぱら電子書籍だ。

 

そしてこの電子書籍で、ひとつ解せないことがある。使ったことのある人ならば知っていると思うが、時々文章の横に、

 

「50人がここに線を引いています」

 

と現れる。頼んでもいないのに、勝手に「〇人の人間がここを重要な部分として認識しています」と教えてくるのだ。

 

これを初めて見た瞬間思った。

 

それで?

 

もともと線を引かない派の私には全くいらない情報だし、なんなら何度も現れると段々腹立たしくなってくる。

 

しかし同時にこう考えるのはどうだろう。「本を汚したくない」という理由で、今まで紙の本に文字や線を書き込まなかったけれど、電子ならば思う存分書き込み放題だ。いっそ書き込みにチャレンジしてみるのだ。

 

ブランド立ち上げにあたり、「エシカル×アパレル」の先駆者である先輩方の本を2冊読んだ。

 

1冊は「マザーハウス」の山口絵理子さんの著書。山口さんは、昔雑誌『クーリエ・ジャポン』で連載を持っていて、それを読んでいたので知っていた。

バングラでの日々がリアルに描かれており、途上国関連の仕事をしている身として共感できることも多かった。それにしてもガッツがありすぎる。

 

そしてもう1冊は、日本のエシカルジュエリー先駆者である白木夏子さんの著書。おそらく高校生・大学生くらいを想定して書かれた本だと思うが、これからソーシャルビジネスを始めたい大人でも十分役立つ内容だった。

どうだろう、これらこそ、大事な箇所にマーカーで線を引くべき本ではないか。私もそろそろ「本への書き込み」と和解して、友好関係を結んでみるのもいいだろう。

 

前の記事でも言ったが、私は日本のエシカルジュエリー界の先駆者ではない。それは通常ディスアドバンテージだが、見方によってはアドバンテージにもなる。例えば、こうして先輩たちの経験を学び、想定できる障壁などは事前に準備して回避することができる。ありがたく先輩たちの経験を活かしながら、自分のビジネスを確立させていきたいものである。