ジュエリーワンダーラスト

エシカルジュエリーブランドの立ち上げ準備の記録と海外暮らしについて。

今まで名刺なしでした

宝飾業界は、男社会である。

 

ジュエリーを買いにデパートなりジュエリーショップなりに行くとき、大抵対応してくれる店員さんは女性だと思う。私のようなスモールビジネスのジュエリーブランドオーナーも、女性が圧倒的に多い。

 

しかしもっとその先の、ジュエリー会社を運営している人、ジュエリーを仕入れる人、ジュエリーを作る人、宝石をカットする人、貴金属や宝石を売る人、それらを採掘する人…挙げればキリがないが、上流に行けば行くほど従事者は男性が多くなる。一般消費者には意外に思われるかもしれないが、宝飾業界は基本的に男社会なのである。私が関わったことのある業者の代表も、今のところ一人残らず男性だ。

 

初めて私が業者にコンタクトを取って、いざ商談のために会いに行くとき、向こうが知っている私の情報は「エシカルジュエリーブランドを始めるために奔走している(比較的)若い女性」ということしかない(余談だが、私は名前の字面から「男性だと思った」と言われることが多い)。実際に会ってみても、見たところ特に尖ったところも無い普通の女性だ。ピアスが5つ開いてるけど。

 

初対面の人との商談というのは、互いが腹の探り合いだ。「信用に足る人間なのか」、「どこまで本気なのか」、「将来的に得意客になるりそうか」。特に私のような新たに業界に参入する新参者は、先方を一発で納得させられるだけの実績がない。一言でいうと、舐められやすいのである。

 

するとたまに(本当にたまにだが)、起こることがある。それは「マンスプレイニング」。マンスプレイニングとは、man(男性)とexplain(説明する)を組み合わせた造語で、Wikipediaから引用すると、「説明を受ける者が説明者よりも多くのことを知っているという事実を無視して説明すること、多くの場合、男性が女性に行うこと」だ。

 

私がまだこの言葉を知らなかった何年か前に、書店で『説教したがる男たち』という本を知った。それで初めて、「この現象」というのは個人の問題ではなくジェンダーの問題だったのだと知った。

 

私より知識も経験もある業者の方が、宝石やジュエリーについて私に説明してくれる時、それは純粋にありがたいお話であり、マンスプレイニングでも何でもない。

 

ただひとつ「エシカル」の領域、これについては大抵の場合私の方が知っていることが多い。私から一通り、ブランドのコンセプトやこれまでしてきたこと、そして将来の展望を聞いた上で、それでも心配心から(と私は思いたい)「でもエシカルジュエリーの場合は~」と意見をくれる人と出会ってきた。問題提起や建設的な議論ならば大歓迎だ。しかしそういう時は大体、「それ私が知らずにやってるとでも思ってんのか」と言いたくなるようなアドバイスだったりする。

 

こういう事態を防ぐために、結構役に立つなと最近になって気が付いたのは、身も蓋もないが「学歴」と「海外経験」、そして「GIA GG(宝石鑑定士)取得予定であること(当時)」だ。

 

初対面の早い段階でこれらを開示することで、最低でも「自分は新参者ではあるが、他の分野では一定の実績を出してきたし、真剣に学ぶ意欲も能力もある人間である」ということは示せる。もっと平たく言えば「舐められない」ために有効なのだ

 

GIA GGを取得したのは実務的な理由が大きいけれど、肩書としても大いに役に立つ。たかが資格、されど資格。せっかく多大な労力と時間とお金をかけて取得したのだから、名実ともに大いに活用していきたい。