ジュエリーワンダーラスト

エシカルジュエリーブランドの立ち上げ準備の記録と海外暮らしについて。

住民票って大事

前の記事からまた日がいたが、実はブログに書いていない進捗が諸々あるので、ぼちぼち書いていきたい。

まずは去年11月(!)のご報告。

Twitterでは遠の昔に書いたが、1年以上前から目をつけていたアクアマリンが手に入った!

 

本当に嬉しい。今回仕入れたアクアマリンは、ひたすら地道にグーグル検索をして見つけた、ジンバブエにある鉱山のアクアマリンだ。

 

ジンバブエは、私が数年にわたって仕事をしていた国なので愛着を持っている。山だらけの日本とは真逆の、平たく地平線がどこまでも見える広大な土地の美しさや、明るくたくましく毎日を生きる現地の人のフレンドリーさも知っている。

その一方で、恐ろしく高い失業率やインフレ率など、人々の経済状況の苦しさについても理解している。街中では、いつ補給されるとも分からないガソリンを求める長蛇の車の列があちこちで見られた。スーパーでは、一日ごとに変わる現地通貨価値のために、毎日変わるモノの値段に翻弄されながら買い物をした。

 

ジンバブエは、天然資源の豊かな国である。アクアマリンのほかにも金やダイア、多くの天然資源が採れる。しかし他の資源豊かな国々同様、彼らの持つ豊かな資源は、残念ながら国民に豊かさをもたらしていない。輸出を天然資源に頼ることで国内の産業が衰退していく、所謂オランダ病というやつだ。

 

件のアクアマリン鉱山は、そんな国にある。悲観的なことを並べたが、ほかの発展途上国同様、この国でも現状を打開しようと行動を起こしている人たちがいる。この鉱山を運営している人たちもそういう人たちだ。この鉱山の一番の特徴、それは世界で唯一、女性採掘者だけでなる鉱山であることだろう。

 

失業しているのは男性もなのに、なぜ女性だけ、という疑問があると思う。それは一般的に採掘を仕事とする多くは男性で、女性が排除されやすいという事実があり、彼らはその問題に働きかけているからだ。ジンバブエには就ける仕事が少なく、女性であっても生きていくために採掘を仕事にせざるを得ない。しかし「女性に採掘の仕事は無理」という固定概念もあり、女性は企業に雇われにくく、結果、違法採掘に追いやられることが多い。また、言うまでもなくハラスメントに合う可能性も男性より高い。

 

このアクアマリン鉱山では、シングルマザーを中心とする女性たちを雇い、各々が安全かつ責任をもって仕事が出来るような環境を提供している。それだけではない。採掘はコミュニティのリーダーたちと話し合いながら、環境やコミュニティへの影響について配慮しながら進めている。「持続可能性」を強く意識している鉱山でもある。そういったビジョンに深く共感できたからこそ、私はここのアクアマリンを見つけて以来、「絶対に使いたい」と思い続けてきたのだ。

 

それなのになぜ調達に1年もかかったのかと言えば、ひとつには、希望のクオリティの在庫が戻るのを待っていたから。クオリティとは具体的言うと、色と大きさである。まずは色だが、一口にアクアマリンと言っても、透明に近い色から濃い青色までグラデーションで色々ある。私は一番濃い色が在庫に戻るまで待っていたのだ。

そして大きさ。私が希望していたのは、小さめのサイズなのだが、これまでの在庫では大きい石が多く、希望のものが中々見つからなかった。また大きさは良くても色がだめ、もしくはその逆だったりして、うまくタイミングが合わなかったのだ。

 

それともう一つの大きな原因は、私が日本にいないことで代金の海外送金ができなかったことだ。現在、世界的にマネーロンダリングへの警戒が強く、住所が証明できない場合、海外送金は行えない。私は日本の銀行を使っているため、日本に住民票が入っている時でないと海外送金ができないのだ。過去にはこれが原因で銀行間での送金が叶わず、仕入れ業者にクレジットカードで支払わせてくれとお願いしたこともある。なので今回は、日本に一時帰国するタイミングを待って仕入れることにした。

自分でビジネスを始めたいといいながら、あちこち国を跨いで引っ越す人もまずいないとは思うが、もしそういう私のような人がいたら、海外送金の問題には十分注意してほしい。

 

とまあ、上記2点が解決されるまでに1年かかったため、今回ようやくかねてから狙っていたアクアマリンを仕入れることができた。

 

代金を送金して1週間かからずにモノは届いた。ジンバブエで採掘された原石は、カットのためにタイへと送られ、そしてタイから私の住む日本へとやってきた。届いたその小さな段ボールを開けるときは結構緊張した。なにせ1年の間に期待値がかなり上がっていたし、注文するのに金額の下限があったため、結構な金額を投じていたからだ。これで実際見てみてだめだったらどうしよう…と不安があった。意を決して何重にもなった梱包を外していくと、最後に出てきたのは小さなジップ付き袋。そしてそれを開きようやくお目当てのアクアマリンと対面することが出来た。

 

結果は、大成功。とても色が濃くて美しいアクアマリンだった。小粒のラウンドカットと約1.6カラットのエメラルドカットを仕入れてみたが、それぞれを使って何を作ろうと、今からワクワクする。

 

唯一難点と呼べるのは、お高いこと。きっと同じスペックでも、ネットで検索すればもっと安く手に入るだろう。しかし私はこっちが適正価格なのだと信じて疑わない。鉱山労働者が毎日人間らしい生活を送り、自分の子どもたちの医療費や教育費を賄うために必要な金額ならば、喜んでこの金額で仕入れる。そして近い将来、この価格がスタンダードになるはずだ。私はお金持ちになりたくてビジネスを始めるわけではないので、小売価格は高くなり過ぎないようになんとか頑張りたい。

 

ああ早く、このアクアマリンがジュエリーになった姿を見たい。