まだジュエリーのサンプルが出来上がっていないが、出来上がったジュエリーを包む包装紙や箱、紙袋についてどんなパッケージにするか想像を膨らませている。「こういうのがいいな」というデザインがあるのだが、もちろんパッケージだってエシカルに配慮して選びたい。
今まで私がエシカルについて話すとき、主に鉱山労働者などの人権について焦点を当ててきた。しかしパッケージについては紙などの資源、つまり環境問題に関わる部分が大きくなる。
私は環境問題については専門的に教育を受けたわけではない。しかし個人的な興味は持っていたので、本などで独学をしている。その程度の知識レベルで、エシカルなパッケージについて考えた際、まずはリサイクル紙100％からなるパッケージを使うことを思いついた。しかし本腰を入れて調べてみると衝撃の事実が判明した。
「100％再生紙の紙は環境に良くない」
古紙をリサイクルするためには膨大な工程を経る必要があり、その間に排出される二酸化炭素量や使用される水のことを考えると、100％古紙利用は逆に環境に負荷をかけるというのだ。
本当はこんなことは衝撃でもなんでもない。これはダイアモンド業界における「天然と人工、どちらがエシカルなのか問題」と本質的に同じだからだ。それなのにそれが紙になった瞬間まんまとグリーンウォッシュに嵌ってしまうとは恥ずかしい。
環境に優しいパッケージを選択するために勉強を進めると、初心者にとても分かりやすいウェブサイトがあった。
オリジナル紙袋に、再生紙100%は選ぶことができる?｜紙袋のギモン解決
井上紙袋さんのこのサイトからいくつか抜粋したい。
「製紙業界第一位の王子製紙も、「再生率が高いほど環境負荷が低いとは限らない」という見解を発表しているし、日本製紙では2007年には古紙100%の再生紙の生産を全面的に廃止しているよ。日本製紙は「古紙100%が環境にいいってのは完全に誤解だ」とずっと訴え続けているんだ。」
「古紙が資源であることには変わりないから、古紙の製造がまったく悪いわけではない。日本製紙は、古紙配合の比率が重要だと言ってる」
実際に調べてみると、王子製紙も日本製紙も公式HPに「100％古紙利用はしない」と書かれている箇所は見つけられなかったが、どちらも「2020年度までに古紙利用率65％の目標達成」を掲げていた。
資源有効活用（紙のリサイクル） | 環境 | 王子グループ サステナビリティレポート
日本製紙連合会 | 環境への取り組み | 紙のリサイクルに対する考え方 | 古紙利用率65％目標について
そして同じく井上紙袋さんのサイトでは、紙袋のみならずその取っ手に使う紐についても議論されている。
私は常々「エシカル」は一言で定義できない、と主張しているのだが、こちらではそれと同じことを「エコ」に置き換えて語っている。
具体的に何をもって「地球に優しい」と言ってるの？
製造過程でVOCやダイオキシンなどの有害物質、二酸化炭素、熱を出すかどうか？水を使うかどうか？製造時に使途のない副産物が出るかどうか？廃棄物が生分解されるかどうか？リサイクル可能性？それともリサイクル時の二酸化炭素排出量のことを言ってるの？
総合的に見て、誰がそれを評価・判断するの？
「製造過程で有害物質は出ないけど二酸化炭素は多少出るし機械に水は必要で、でも水の量はそれほど多くなくて、副産物はちょっと出るけど燃やすことができて、生分解されるけど特定条件で50年かかる。リサイクルはできるもののリサイクル過程で二酸化炭素が出る。コスト的にもリサイクル実現は難しいだろう」という素材があったとして、それって地球に優しいの？組み合わせは無限にあって、それぞれ程度が違うのに一言で済ますの？
めちゃくちゃ信用できる…！
ということで、現時点での私のパッケージに対する考えは、包装紙には紙業界で環境負荷が低いと言われている配合の古紙を使うこと。一方、ジュエリーケースについてはリサイクルよりも、「貰ったら捨てずに使い続けたいと思える魅力的なデザインにする」という方向に思考が変わってきている。ジュエリーブランドである以上、パッケージを含めて商品なので、エシカルを最優先した結果、魅力的ではないパッケージになるのは本末転倒だからだ。なるべくコンパクトなデザインにした上で、長く使ってもらえる素材にした方が、私の理想とするエコには合っているかもしれないと考えている。
パッケージに着手するまでにはまだ時間があるので、これからもリサーチを続けて、自分に出来る最良の選択をしたい。
